腋臭症・腋窩多汗症について

「腋臭症」や「腋窩多汗症」は、重篤な疾患ではないですが、患者さんにとっては日常生活上の困難や精神的な苦痛もたらしたりしますので、的確な診断や治療が必要です。

「腋臭症」と「多汗症(腋窩多汗症)」は別々に診断されますが、「 腋臭多汗症」として併発することも多いです。

「腋臭症」の場合、診断の際には、耳垢の性状や家族歴の有無、下着や衣類の黄ばみ、多汗症の合併などがポイントとなります。腋臭症患者は湿った湿性耳垢を有しており、片親が腋臭症であると、子の50%に遺伝するといわれています。また、衣類に黄ばみがあれば腋臭症の可能性も高いです。
保存的治療治療としては、①発汗を減らす目的での消臭・制汗剤の使用 ②抗コリン剤などの内服薬 ③塩化アルミニウム液の外用 ④ 制汗目的でのA型ボツリヌス毒素による治療 などがあります。
保存的治療に共通することは、腋臭対する効果持続時間に限りがあることです。特に内服治療は、必ずしも全例に有効でなく、喉が乾く・動悸がするなどの副作用で継続がむずかしいことが多いです。

確実な治療効果と持続性を期待するには、腋臭症の原因であるアポクリン汗腺の除去が必要になります。つまり、外科的治療のことで、保険適応がある①剪除法(皮弁法)②皮膚有毛部切除法 があります。現在一般的に広く行われているのは、①の皮弁法で、腋窩の皮膚を温存して汗腺組織を直視下にみて確実に除去していく方法です。汗腺を除去した後の、浮いた皮膚が落ち着くまで術後1週間程度の腋窩の圧迫固定と腕の挙上制限が必要です。
当院では外来手術の際、片側ずつの手術すすめることが多いです。

その他、保健適応外治療ですが、機器を用いた方法で、皮膚に切開を入れずに汗腺組織を破壊する方法として、マイクロ波やフラクショナル高周波による治療をとりいれているクリニックもあります。まだ手術と同等の効果を得られるかや必要な回数など確実ではなく、今後の治療効果の報告を待ちたいところです。

「腋窩多汗症」の場合も同様に、①発汗を減らす目的での消臭・制汗剤 の使用 ②抗コリン剤などの内服 ③塩化アルミニウム液の外用 などが行われてれいます。
また、重症かつ他の疾患がない原発性腋窩多汗症の場合は、2012年よりA型ボツリヌス毒素(ボトックス)での治療が保険適応になり、有用性が高い治療です。

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